• 田井の目

外国人材の増加は不動産市場にどのような影響を与えるか? 2018.12.14

先週の国会で激しいやり取りがありましたが、結局のところ既定路線通りに新しい在留資格に関して定めた改正入管法が成立し、単純労働に従事する外国人労働者を受け入れる門戸を開くことになりました。想定受け入れ人数は34.5万人だそうで、それがどのぐらいの影響を及ぼすかを不動産の観点から考えてみたいと思います。

よく混合しがちですが、街を闊歩し様々なお店でお買い物をしてくれる外国人さんは「訪日外国人」、すなわち在留資格がいらず観光ビザを中心に、短期滞在を目的とする方々であり簡単に言ってしまえば旅行者であるといえます。そして、その数は約3,000万人にまで増え、経済効果は4兆円と言われています。しかし、その実態は中国、韓国、台湾からなどの近場の旅行者が中心で一人あたりは10万円程度の支出にとどまっています。この旅行者と違い、日本で居住し、働きながら生活のための消費をする外国人労働者は、旅行者のような派手な出費はしないものの、確実に一定の金額を支出することが考えられます。

仮に訪日外国人が1回の訪日で10万円を使うとし、在日外国人は月5万円しか使わなくても、5年間すなわち60カ月在留すれば、300万円をつかうことになります。従って一人の旅行者が増えるよりも一人の在留者が増えることは30倍の経済的インパクトがあることになります。このように考えるといわゆるインバンドが増えて、ホテル市場を中心に投資が活性化しているように、一見数は少ないように見えますが、在日外国人の増加は当然不動産市場に与える影響は少なくないと考えられます。

まず考えられるのは、今までは特に技能実習生などは会社の工場や、もはや日本人が入らなくなった寮などを活用しとりあえず改装して住まわせていたのですが、それが増えることにより、外国人労働者のための集合住宅のニーズが高まることが予想されます。
そしてもし受け入れている外国人を一つの棟で住ませるとなると、すべて同じ国で同じ習慣を持っている方が住むとは限らないので、集合住宅のルール作りや規約を諸外国の風習や慣習を踏まえて明確に作る必要がでてきそうです。

また集合住宅のニーズ以外にも、新在留資格により家族を帯同できる特定技能2号が増えてこれば、実質的な移住であるため、寮ではなく家族が住む戸建住宅などの需要も高まるのかもしれません。

非常に楽観的な見方かもしれませんが、基本的な日本の家はアジア圏のなかではメンテナンスや水回りの維持はいいと思われので、空き家をそれほど大きな金額を投資することなく、外国人労働者に貸すことができれば、空き家政策や定住政策の一定の担い手になる可能性はあります。

また、日本は世界でもむしろ稀といえる、外国人が土地の所有に対して制限がない国なので、日本の実質的な永住権を取得した外国人が日本の土地も欲しがる可能性は高く、そのようなニーズに対応した外国人専門の不動産仲介や登記の対応ができる業者が増えてくる可能性もあります。

そして不動産が動けば、それに付随するサービス、すなわち医療や教育サービスも無視できないマーケットが形成されていきますので、それに対応していくのか、それとも今後も“外国人お断り”を続けていくのか、二択を迫られることとなると思います。

なんとなく風潮的にインバンドと呼ばれる訪日外国人は、短期で帰るわりには相応のお金を落としていくので、どんな地方であってもウエルカムに対応している傾向がありますが、在日外国人に関しては、お隣に住むかもしれないので、ちょっと警戒し、自分の生活を脅かす存在になるのではないかとナーバスになる風潮にあります。

しかし、我々が選んだ政権によって門戸は開かれてしまいました。
個人的には門戸を開いたが、思ったよりも入ってきてくれない、つまり実は出稼ぎのために滞在するにはちょうどいいが、言葉や文化を覚えてずーと住みたいと思うほど魅力はなく、予想よりも全然増えないという懸念もあるわけであります。

そのような懸念を払拭し、来られる外国人もそして迎え入れる我々にとっても、互いにハッピーになるような身が詰まった制度にこれからしていってもらいたいと思います。

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