• 田井の目

不動産ネット取引解禁へ~不動産業界のデジタル・デバイド~

2014/04/22

不動産ネット取引解禁へ~不動産業界のデジタル・デバイド~

本日、不動産の売買や賃貸に関し国土交通省がインターネット取引を解禁する検討に入ったとの報道がありました。

「不動産ネット取引解禁」とはどういうことかというと、今まで不動産の取引は宅地建物取引主任者が重要事項に関し”対面”で説明し、”書面”を交付する事が求められていたのですが、その”対面”は実際に会わなくても”インターネットによるやりとり”で可能とし、また”書面”は”データファイルなどの電磁的方法”によるものも認めることでありいわば”ネットで重説(じゅうせつ)”というべきものであります。

これは2013年11月14日に新経済連盟が「不動産のインターネット取引の実現に必要な規制改革」という政策提言資料が、同日行われた第2回IT総合戦略本部新戦略推進専門調査会規制制度改革分科会で議題に挙げられたことで、今回の所轄官庁における検討会の立ち上げに至ったのだと思います。

この新経済連盟は薬のネット販売の解禁など、ITを使って自由な売買を活性化するために、それが足かせとなる法律の改正を多く提言されています。

そしてこの”ネットでじゅうせつ”が可能となると法律上、契約行為はもともと対面を必要としていないので、今のネット証券やネット保険会社の取引のように不動産売買や賃貸もネットで完結する可能性があります。

そうなると今はネットで不動産を探して、リアルな店舗がある不動産会社に問い合わせしていたのが、「楽天リアルエステイト」とか「yahooリアルエステイト」とかネットでしか存在しない店舗にお願いすることができるようになるでしょう。

このような話題になると、消費者保護の観点から”高額な不動産をネットでなんて”とか”なり済ましのリスクが高い”とか負の側面からの指摘をあげて、現状維持を唱える声もありますが、ネット銀行やネット証券でも利用する人は利用していますし、その金額だってかなりのモノだと思いますので、私の個人的な意見としては選択肢が増えること自体は、まったく消費者にとってデメリットとならないと考えています。

それより現在は重要事項の説明と契約の締結が不動産会社の便宜上同時になされてしまい、重要事項の内容を十分検討する時間も無く契約に進んでしまっているのが実態だと思いますので、むしろ消費者保護の観点からは望ましい動きだと考えています。

ただし事業者の観点からは、いわゆる街の不動産屋に与える影響は大きく、金額が高い”売買契約”に関してはまだまだ当面は消費者も知人からの紹介に頼るとか、地元での評判を重視するなど慎重な行動をとると思われますが、需要者が比較的若く、すでに”ネットで賃貸”などネットで探すほうが当たり前になってしまっている”賃貸契約”では、オークションでなにかを買うようにネットで即決し、契約完了まで進むことがすぐに起こり得ると思います。そうなると駅前で昔からあって情報が紙ベースでしか管理していない不動産屋さんは、仲介業務に関し相当苦戦を強いられる可能性があるのではないでしょうか?

しかしその一方で、遠隔地そして海外からの顧客を受け入れやすくなるメリットも考えられます。

そこで例えばここ愛知県だと工場で働くブラジル人などが多いので彼ら向けの賃貸物件のポルトガル語のサイトを立ち上げ、ネットでじゅうせつすれば、来店してもらうことなく仲介料を得ることができるし、地元以外の仲介に関与できる可能性も広がります。それ例外でも時間に関して日本の夜はブラジルにとって昼なので昼は日本人向けのリアル店舗、夜はブラジル人向けのネット店舗という24時間営業の不動産屋さんという新しいビジネスモデルの展開なんてのも可能になるはずであります。

まだまだ宅建業には取引主任者の事務所の設置基準や業法上の事務所の定義の見直しなど、乗り越えるべき課題は多いと思いますが、不動産取引や不動産ビジネスに大いに影響を与える動きだと思いますので今後に注目していきたいと思います。

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