• 田井の目

”空中族”になりたい人へ

2016/06/03

”空中族”になりたい人へ

少し前になりますがNHKの報道番組で「空中族」なるものの特集を放映していました。
あまり耳馴染みがない言葉ですが、「空中族」とは需要が過熱している都心のタワーマンマンションの次から次へと転売して利益を得る人々をいうようです。
地面を次から次へ転売するのは地上げ屋さんですが、タワーマンションからタワーマンションに移り住み続けるので、”空中族”と命名するとは、少々古めかしいですが的を得たネーミングだと思います。

さて、その番組内では湾岸エリアで2年間に3,200万円で買ったマンションが1千万も査定額が上がった例や2年ごとの転売を繰り返して高級マンションを手に入れた方の例が紹介されていました。
そしてこのようにタワーマンション投資が儲かりそうだという情報はすでに広く知れ渡り、次に続けとばかりに多くの人が不動産投資セミナーで勉強してこのマネーゲームに参加しようとしているようであります。

よく不動産投資は”ばば抜き”のカードゲームに例えられます。ただしゲームに参加する多くの方は自分がばばを引くとは思いません。
なぜならこんなにたくさんのプレーヤーがいるなかで自分の持っているカード(物件)だけがばばであるはずがなく、きっとどこかの知らない誰かが持っていて、自分はばばを見ることすらないと思っています。

確かにカードゲームと似ている点はあります。しかし、圧倒的に違う点は、カードゲームは敗者が一人であるのと比べ、不動産のばばぬきはいったいいくつばばが市場にあるのかわからず敗者が一人と限りません。
さらに経済状況によりプレーヤーの知らないうちにルール変更され、ある日突然全員の手持ちカードがばばに変わり、ゲームの参加者はすべて敗者となりることもあるという、恐ろしいゲームであります。

このゲームのルールを、テレビに出てきた、
「今は銀行金利が0.01%なのに比べて不動産投資では5~6%が一般的という点にうんうんとうなずくだけで、”金利”と”利回り”の違いについて考えてもみなさそうな人」や
「10年間は赤字だが、10年後から安定した家賃が見込めるからと、駅から徒歩20分のワンルームマンションを購入した人」たちがご理解されているとは到底思えず、見ていてなんだか暗い気持ちになりました。

もちろん今のマイナス金利政策下では、金融機関は貸出先として不動産関連に力を入れざるを得ませんし、金利コストも低いわけなので、投資のチャンスであることは間違いないと思われます。
そして「何もしないことがリスク」というのも、ある面はあたってはいるとは思いますが、「行動を起こせば必ず報酬がもらえる」といわけではないと思います。
チャンスであるからこそ、正確な情報を得て慎重な行動が必要だと思います。

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