• コラム
  • 不動産鑑定に関するお役立ち情報

不動産鑑定費用を支払うべき物件と無料査定でよい物件|有料・無料チェックシートあり

不動産鑑定費用

一般的な戸建住宅やマンションの売買であれば、無料査定で市場価値の把握が可能です。しかし、多くの不動産は様々な個性があり、法律上の規制が特殊なものや事業用の不動産の価値は無料査定では十分に調査されません。現在多くの不動産検索サイトで無料査定サービスが提供されていますが、その利用を誤ると思わぬ見落としや判断ミスから大きな損失を被ることがあります。無料査定と有料の鑑定の違いやその費用に関する情報を得て、不動産鑑定を賢く活用してみましょう。

不動産鑑定費用の相場は15万円~25万円

評価額 土地のみ 土地・建物
~3,000万円 5万円~15万円 10万円~20万円
3,000万円~1億円 15万円~25万円 20万円~30万円
1億円~ 25万円~ 30万円~

不動産鑑定費用は15万円から25万円が相場といわれます。

なぜなら、個人や法人が関わる不動産の規模は億単位までが中心であり、鑑定が行われる理由が、金額の大きさよりも当事者で合意点を見いだせないときに行われるものだからです。

もちろん、鑑定評価の対象となる物件にはJ-REITなどの特殊な物件もあるので、何十億円や何百億円の物件もあります。そのような物件の鑑定費用はかなり高額になりますが、それはごく一部の例です。

鑑定評価は、金額の差はそれほど大きくない場合でも、裁判などで鑑定結果を根拠に決着をはっきり付けるような場合によく活用されます。

以上のように、不動産鑑定費用の相場は15万円から25万円程度と、実は何百万円もするようなものでなく、どなたでも利用できる金額です。

不動産の鑑定費用の決まり方

不動産の鑑定費用は、不動産の評価額と作業量で決まります。

土地や建物の規模が大きいほどその総額が大きくなり、資産価値が1,000万円ならば、その10%の差は100万円ですが、1億円ならば10%の差は1,000万円になります。 資産価値が大きいと、少しの評価の違いが大きな金額の違いとなり、価値の判断を行う不動産鑑定の重要性が増すため、費用が高くなります。

土地や建物の規模が小さくても、手間がかかる場合には費用が高くなる傾向にあります。鑑定の対象となる不動産には土地以外にも土地と建物一体の場合や借地権などが設定されたものがあります。棟数が多いほど作業は複雑になり、借地権などの権利関係が付随する場合には手間がかかるため、費用も高くなるのです。

不動産の鑑定費用の決まり方
  • 1.不動産の評価額で決まる場合
  • 2.作業量で決まる場合

1.不動産の評価額で決まる場合

不動産の評価額で鑑定費用を決める場合、よく使われるのが用地対策連絡協議会による「公共事業に係る不動産 鑑定評価報酬基準」です。この用地対策連絡協議会(通称:用対連)とは、国土交通省の管轄する団体で、道路や橋 を作るための公共用地の取得業務が仕事です。

用対連は公共団体であるため、鑑定士への報酬に対する一定の基準を設けています。この基準によると「類型」と呼ばれる不動産の種類ごとに、以下のような軸が設けられています。

金額/類型 A(宅地または建物の所有権) B(宅地見込み地の所有権) C(農地、林地、原野等の所有権、家賃)
5百万円まで
10百万円まで ◎縦横が交差したところで金額が決まる
15百万円まで

上記のように、評価額に応じて段階的に変わっていく欄があり、横軸と縦軸のマトリックスが交差したところで報酬が決まります。

例えば、鑑定評価額が2900万円の土地ならば、縦軸が「3百万円まで」、そして類型がA(宅地または建物の所有権)の横軸で交差する211千円というふうに報酬が決定されます。このように公共事業のために決められた報酬基準ではありますが、報酬の決まり方が明確で、計算もしやすいため、多少のアレンジを加えて自社の報酬基準として採用している不動産鑑定業も多いです。

2.作業量で決まる場合

上記の基準によらず、不動産鑑定にかかる作業量に応じて鑑定費用を決めることも増えてきています。

作業量に応じて鑑定費用を決めることが増えている理由
  • 公共の業務だけでなく民間業務が増えたから
  • 評価額の大小では手間の大きさが正確に反映されないから
  • 1番目の理由として、公共の業務だけでなく民間業務が増えたからです。

    公共の業務であれば、どの会社で同様な費用で行われる公平性が重視されますが、民間の場合にはより安くという競争原理のもと、無駄な作業はカットして安く早く作業を行うことが求められます。

    2番目の理由としては評価額の大きい小さいでは、手間の多さなどが正確に反映されないからです。

    たとえば物件のリスク評価を考えてみましょう。土地のリスクなどの評価は、単純に資産価値が大きければ手間がかかるとは限りません。かつては土壌汚染やハザードマップを詳細に調べるなどはしておらず、リスクとして認識していませんでしたが、今は必須のもので、かつその内容も高度化、多様化しています。評価額の大きさで報酬が決まってしまうと、手間が増えるのに報酬は下がることになり割にあわなくなってしまいます。

    そこで最近では物件の複雑さや調査項目の多さなどの手間の多さに応じて、適正な報酬を積算することが主流になってきたのです。

    以上のように不動産鑑定費用の決まり方には2通りあると考えられ、不動産鑑定を依頼する際にもその違いを理解する必要があります。

    無料査定と有料の鑑定の違い|無料査定には理由がある!思わぬ落とし穴に注意

    不動産の価格をWebで調べようとすると「査定無料」などと記載された不動産業者のホームページをよく目にします。
    同じように不動産の価格が分かるなら、もちろん無料の方が良いに決まっています。

    しかし実は、無料査定には有料の不動産鑑定にはない”落とし穴”や”注意点”があるのです。
    無料査定を行うのは宅建業者であり、有料の鑑定を行うのは不動産鑑定業者ですが、その法律上の相違点や価格に関する捉え方、そしてどの場面でどちらを選ぶべきか、その選び方について見てみましょう。

    無料査定と有料の鑑定の違い
    • 法律上の根拠の違い
    • 使われる目的や場面の違い

    1.法律上の根拠の違い

    不動産鑑定や査定を行う担当者
    • 有料鑑定:不動産鑑定士(唯一、お金をいただいて鑑定できる資格)
    • 無料査定:宅地建物取引士(法律上、不動産仲介料でしか報酬を得られない)

    無料査定と有料の鑑定では、担当する人が違います。

    無料査定を行うのは宅地建物取引士、有料鑑定をするのが不動産鑑定士です。宅地建物取引士も不動産鑑定士も同じように不動産の価格の調査を行いますが、その目的が大きく違います。

    不動産の取引に関して仲介を行う場合には、取引価格の根拠となる資料を提供しなければならない、と宅地建物取引業法で取り決められています。(宅地建物取引業法第34条の2第2項)

    宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対し、取引態様の別を明らかにしなければならない。宅地建物取引業法 | e-Gov法令検索

    不動産業者が価格の調査を行う理由は、売主と買主の取引が上手くいくようにアドバイスをする一環として価格の情報を提供したいからなのです。

    そうなると、ネットでは誰に対しても査定無料にしていることが不思議に思えますが、不動産の価格を査定してみたいと思う人は、やがて不動産を売買したいという意思がある潜在的顧客であると拡大解釈をして、不動産業者はサービスを提供しているのです。

    そして不動産業者がその報酬を得ることができるのは、不動産仲介料によってのみなので、この価格査定のサービスを切り離して、料金を得ることはできません。つまり不動産業者が無料で行うのは、顧客のためというより、仲介料以外で料金を得ることができないからなのです。

    一方、不動産鑑定業者は不動産鑑定業法に基づき、他人の求めに応じて報酬を頂いて継続的に不動産の価格調査を行います。そして、お金を頂いて不動産の価格査定などの調査を行えるのは不動産鑑定士だけなのです。意外に知られていませんが、法律上はこのような明確な違いがあります。

    2.使われる目的や場面の違い

    査定・鑑定の目的
    • 有料鑑定:裁判・相続の申告のために行う(弁護士・税理士が主な依頼者)
    • 無料査定:不動産の取引を円滑にするため行う

    無料の価格査定は不動産業者が行うものなので、その目的は不動産の取引を円滑に行うためであり、その多くは第三者間の取引で行われます。

    また売買が目的であるので、建物や権利関係が付着してるなら、その存在を前提として行われることがほとんどです。

    一方、有料で行う不動産鑑定では、売買よりも裁判や相続の申告のために行われることが多く、それは第三者との売買よりも、むしろ親族間とか利害関係者間が中心で、合意できない価格に対する指針を示すことを目的としています。

    第三者に対してなら、提示した価格に納得できなければ、売主でも買主でも取引をやめればすみます。しかし、親族や利害関係者はすでに関係性を持っている人同士なので、その関係を修復させる目的で不動産鑑定は行われるのです。そのため、不動産鑑定は弁護士や税理士がその依頼者となることが多くなります。意外に思われるかもしれませんが、不動産業者が仲介のために鑑定士に評価をお願いすることは、ほとんどありません。

    有料の鑑定を選ぶべき物件とは?目的、タイプ、条件別に解説

    有料の鑑定を選ぶべきか、無料の査定で十分か、簡単に分かるチェックシートをご用意しました。下のチェックシートを見て、「有料」のほうの条件にひとつでも当てはまれば、有料の鑑定をお願いしたほうが確実な結果が出るかもしれません。

    1.目的|売買以外の相続や訴訟かどうか

    相続や訴訟の場合には無料よりも有料の鑑定評価を利用すべきです。

    不動産売買に関する場合は、無料の査定でも問題ありません。

    下で詳しくみていきましょう。

    有料の鑑定をおすすめする場合
    • 相続や訴訟などのトラブルが起こってしまったとき
    • 争点の主要となる不動産の価格に対する判断が必要なとき

    ⇒リスクもあるため、有料で得られる安心感が価値が高い

    無料査定で問題ない場合
    • 自分が所有する不動産を売った場合にいくらお金が手に入るか知りたい
    • 結婚を契機に家を買いたい
    • 資産の活用や有効利用をしたい

    ⇒不動産業者の無料査定でOK

    売買に関連する不動産の価格査定は、不動産業者にとって最も得意分野でありますし、無料であっても親身に対応してくれます。このようなケースでは、不動産会社はとても頼りがいのある存在と言えます。

    裏を返せば、売買につながらないような相続や訴訟関係で価格査定を行うことは、不動産業者にとってメリットはありません。顧客との関係性から無料サービスの一環として行っているのです。

    相続や訴訟などのトラブルが起こってしまった場合には、税理士や弁護士などの専門家に依頼し、コストをかけて解決する人が多いです。

    争点の主要となる不動産の価格に対する判断が無料で行われる場合には、その内容の検証や検討が十分に出来ない可能性もあります。

    また間違った判断・情報が提供されても、無料の場合はその責任を追及するのも難しいです。これらのリスクを考慮すればむしろ有料で得られる安心感のほうが価値が高いのです。

    2.タイプ|事業用不動産かどうか

    法人用の事業用資産の場合は、有料の鑑定評価を利用すべきです。

    不動産には様々な種類があり、個人で取引する不動産は戸建てやマンションが中心に一部投資家向けの収益物件として一棟の共同住宅などが考えられます。

    法人を主な顧客としている不動産会社なら企業が保有する不動産として事務所ビルや店舗や倉庫などの事業用不動産を取り扱うことが考えられます。このような物件は「法人営業部」などが対応することになり、無料査定などを個人向けに行う従業員とは違う担当者が担当します。

    事業用は個人用の戸建住宅やマンションとは異なり、不動産それぞれの個別性が強く、場合によっては土地の面積や建物の棟数の確定さえも難しいこともあります。そのような理由から無料で査定することに難色を示す不動産業者もいます。

    従って物件のタイプが典型的な個人向けならば無料査定でもいいですが、法人の場合には 有料の鑑定評価の利用が望ましいです。

    3.条件|実際の建物以外の想定条件があるか

    現状と違う状態を想定して不動産の価格を調査する場合、有料の不動産鑑定を利用すべきです。

    不動産が第三者間で取引されるのは、「土地」だけか「土地と建物」が中心で、「建物だけ」という取引はなく、実際には借地権などの土地の利用権も一緒でなければ建物を利用することはできません。

    しかし、相続や裁判ではむしろ土地と建物を分けて価値判断をしたり、建物が存在しているのに、存在していない状態を想定して価値判断することが多いです。

    このように現状と違う様々な想定条件を付けた価格査定は有料の不動産鑑定でしかできないと思います。

    価格査定が難しい要注意物件3選

    普通の売買目的の戸建住宅なら、無料査定であっても、その査定された価格に問題ないはずですが、やはり例外はあります。 特に、

    • 高圧線下の土地
    • 市街化調整区域の土地
    • ホテルやゴルフ場などの事業用不動産

    などに代表される土地は立地条件や法律上の規制が多いので、それをどのように判断するかで、価格が大きく違います。

     

    このような「要注意物件」を査定する場合には、有料の鑑定を相談してみるのも一手でしょう。

    1.高圧線下の土地

    高圧線下の土地に関しては、売買では必要以上に低く査定が行われる傾向にあります。

    高い鉄塔が住宅地内を横断している光景は郊外ではよく見られ、鉄塔とこの電線を一体として高圧線とよばれています。 この高圧線は我々の日常生活に欠かせない施設なのですが、「高圧電流が通っているため電線が切れたら怖い」「鉄塔が日照や景観を阻害する」などの嫌悪性からその直下や近隣では地価の減価要因になることがあります。

    このように実際の土地の利用には支障がなくても、買主がわに心理的に嫌悪感をうむ可能性があるために、主観的な判断で大きな価格差が生じます。

    不動産業者は売買を成立させることが目的なため、買主がいやがるポイントについては、具体的な要因がなくても大きく減価しがちです。

    従って売主の立場で価格査定を行う場合には、このような心理的な要因で大きく減価されてしまい、ご自身の物件の資産価値が低く査定される可能性があることに注意してください。

    2.市街化調整区域の土地

    市街化調整区域は個別性が強く、売買の相場が通じないことに注意が必要です。

    大半の都市は都市計画法上の都市計画区域に属しますが、主にこの都市計画区域は住宅や店舗などを建てて市街化を促進する「市街化区域」と市街化を促進しない「市街化調整区域」に分かれます。査定する不動産が市街化区域内にあればいいのですが、市街化調整区域に立地する場合、建物利用を規制するエリアにあるため、何か建物を建てる場合には原則許可を得なければ自由にできないことになっています。

    このように建物の建築は原則ダメな市街化調整区域なのですが、複雑な点は、この市街化調整区域であっても、市街化を促進しないような農業用建物やロードサイド店舗、または近隣住民に役立つ小規模店舗や診療所などは例外的に建築が可能で、この例外の内容については各市町などそれぞれ地方自治体によって違います。

    その詳細な調査は時間と手間をかけて行わないと正確な情報が得られず、また個別性も強いので、隣の土地とは全く違う状態も起こりえます。相場が形成しがたいので慎重な調査が必要になります。

    3.ホテルやゴルフ場などの事業用不動産

    ホテルやゴルフ場などは、不動産の良し悪しよりも設備と経営の良し悪しがその価値を大きく左右します。

    事業用不動産は一般的な不動産である戸建住宅やマンションとは異なり、個別性が強く、担当セクションが特別に存在するぐらいであるため無料査定に注意したほうがよいですが、特にホテルやゴルフ場などの事業用資産は、その資産価値に不動産価値以外も含まれる点に注意が必要です。

    ホテルなら土地や建物以外の、室内設備やサービス、ブランド、そして運営ノウハウなどがホテルの価値を大きく左右します。確かに賃貸マンションなどでも管理の良し悪しは大事ですが、ホテルの場合には、マネージャーの善し悪しがそのホテルの売り上げを大きく左右するといわれています。 ゴルフ場は建物そのものよりも、コースの良し悪しがその価値を決めます。クラブハウスなどの豪華さは、そのゴルフ場のグレードを反映してはいるものの、その規模の大きさや棟数にその価値が比例しないのです。

    このように企業の経営次第でその価値が左右される事業用物件の価格査定は注意する必要があります。

    鑑定費用を支払わなくても相談で解決することがある

    価格査定を行う目的や物件のタイプや特性によっては無料の査定より、有料の不動産鑑定の方が適切な判断ができる場合があります。

    しかし、無料であることは魅力でありますし、何よりも有料の不動産鑑定を頼むにも、何をどうすればいいかが分からない場合が多いと思います。

    無料の査定も有料の鑑定であっても、実は最初に行うことは一緒で、相手が分かりやすいように現状を正確に説明することから始まります。

    費用をかけずまずは無料で相談してみよう

    相談をするにも勇気がいるし、事実関係を説明することに躊躇して、ついネットで検索した答えを事実と思い込みがちです。しかし、検索結果で得られる回答は入力した結果に対して得られたものでしかないので、その入力内容そのものがあっているのか、その判断が正しいのかに注意する必要があります。

    有料で行う鑑定評価も、その前提として「どんな物件を、どのような理由で、どのような条件で」行うかをヒアリングすることからスタートします。 その過程で実は鑑定評価などをしなくても、単なる双方の思い違いであったり、そのそも鑑定するのに適さないということもあります。 説明用の資料を作ったり、記名押印した書類を作成するには有料となる場合が多いのですが、口頭の相談は無料でも、ある意味、価格という結果を得るよりも価値があることもあります。

    したがって、まずは費用をかけず、気軽に相談することから始めてみることをおすすめします。

    タイ・バリュエーション・サービシーズでは、特に税理士・弁護士の先生方に寄り添い、最適な解決策につなげるための相談を積極的にお受けしております。 また、多くの不動産鑑定事務所が無料相談で受け付けている内容に加え、意見書や調査報告書の実績も多く、全国の案件に対応することが可能です。 相続や裁判関係の不動産評価を中心に先生方のお悩みに対しじっくり相談にのり、最適な解決につながるご提案をいたしますので、お気軽にご相談ください。

    コラムTOPに戻る